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人材育成と労働環境を考えるシンポジウム<福岡での議論>(2016年12月29日) - セミナー・イベント

文化庁委託事業「平成28年度次代の文化を創造する新進芸術家育成事業」

舞台芸術のアートマネジメント専門人材の人材育成と労働環境を考えるシンポジウム ~統計・調査から分かる労働環境とこれから必要な人材育成~<福岡での議論>



福岡会場での議論をお届けします!

12月14日(水)、Explatでは福岡・ももち文化センターで「舞台芸術のアートマネジメント専門人材の人材育成と労働環境を考えるシンポジウム ~統計・調査から分かる労働環境とこれから必要な人材育成~」を開催いたしました。 全国6都市で開催されるこのシンポジウムですが、開催ごとに議論を積み上げることを目指しております。
今後のスケジュール(仙台/名古屋/東京)詳細は、こちらをご覧ください!
以下は、福岡会場でのシンポジウムの話題から一部抜粋したものをお届けします。

ファシリテーター:植松侑子(特定非営利活動法人Explat理事長)
パネリスト:
糸山裕子(福岡県立ももち文化センター館長、特定非営利活動法人アートマネージメントセンター福岡 代表理事)
大澤寅雄(ニッセイ基礎研究所 芸術文化プロジェクト室 准主任研究員/文化生態観察)
山口祥平(大分県立芸術文化短期大学講師/一般社団法人CIAN理事)
綿江彰禅(一般社団法人 芸術と創造 代表理事)

主催:文化庁、特定非営利活動法人Explat
共同主催:福岡県立ももち文化センター
共催:福岡県、アートマネージメントセンター福岡
制作:特定非営利活動法人Explat

議論のまとめ

福岡会場では、資格制度、長時間労働の改善、男女格差是正の問題などについての活発な議論がなされました。

(1)資格制度と専門性について
・同じ劇場の中で働いているスタッフの中でも、制作者の職業・職能についての意識が共有されていないと感じることがある(観客より)
・美術分野には学芸員の資格制度はあるが、資格で求められる内容と、実際の仕事で求められるものとの間にはギャップがある。必ずしも資格制度自体は否定されるものではないが、必要かどうかは、もっと議論した方が良いだろう。特に基礎的なスキルなどは、詳細な設定をされることが大事だと思う。(山口さん)
・日本ではマーケティングやファンドレイジング、プロデュース、PRなどの仕事を一人がやることが多いが、アメリカのリージョナル・シアターの場合、これらが細分化した職能として業界で共有されている。職能ごとに専門家がおり、個々の仕事がその専門家たちの間を流れていっているイメージ。劇場専門の求人転職情報誌もあり、そこでは職種別に求人情報が掲載されている。(大澤さん)
・個人的には資格を作ることはあまり意味がないとは思っているが、公務員など日本の給与体系では、資格に手当が出る制度設計になっている。雇用の非正規化は進んでいるが、職能に対して給与を払うということが浸透しいない。「これができるからいくら」という交渉ができないことは問題。(綿江さん)

(2)業界間の流動性について
・過去に銀行で仕事をしたことで、大きな組織の人が何を求めているのかを察する力や、マネジメントとして人を見ていく力がついたと感じている。他の業界の人がもっとこの業界に入ってこないかと思っているのだが、長時間労働などが阻害要因となっている(糸山さん)
・舞台芸術業界でインターンをした後に、一般企業等で働いた人が業界に入ってくる窓口がない(綿江さん)
・仕事が細かく分類されていくほど、一つの組織内での研修では教えづらくなる。そのため業界を超え、スキル別で繋がっていくことが今後考えられるのではないだろうか。舞台芸術業界の中だけを見ると、キャリアチェンジの選択肢は非常に小さい。しかし、舞台芸術に限らず、例えば美術や教育や他業界などにも範囲を広げ「ある職能のプロフェッショナル」といった仕事の組み立て方ができると、その専門性も深まり、お金もついてくるのでは(植松)

(3)長時間労働の改善について
・アート・プロジェクトは最近出てきた事業形態のため、スキル、ノウハウの蓄積が進んでいない。ボランティア上がりや学生といった、若くて元気があるという人が入ってきても、仕事のノウハウがないため、結局は燃え尽きて去っていくことが続き、課題となっている。各事業団体で、労働条件、特に労働時間の改善に関するノウハウをいかに蓄積することができるかが重要だろう。
雇用主側も労働者側も、「労働条件が悪い」「生産性を上げろ」と言うだけでなく、どのようにして生産性を上げられるかという議論ができる時間を少しずつとっていく。やらなくても良い会議などを決めて1日の労働時間を数分削減するだけで、年間換算だと1日、2日休めることになる(山口さん)
・行政と一緒に仕事をするときには、こちらが業務の効率化をしたくても、行政側のロジックを尊重しなくてはならなず、非効率なアナログ方式に合わせざるを得ないこともある。(植松)
・一般企業と協働する場合も業務プロセスが非効率的になってしまうことはある。ただ「この館のミッションはこれだから、これをやるためのお金をどう作るか」といった感覚は一般企業の人の方が強く持っており、話がしやすい気がする(糸山さん)
・労働時間を改善していくためには、トップの人の意識が大事。民間企業でも「残業・徹夜が当たり前」だった風潮から「規定された時間で働くことが仕事という」考え方に、トップダウンで変えていった部分が大きい。そうしないと、非効率で組織が回らなくなっていく(綿江さん)
・入札等で行政側が法人を評価する時には、ワークライフバランスなど「法人としてクリーンであること」が加点される。行政にルール付けをしてもらうことは、そのような意識づけをしていくための一歩となる(綿江さん)
・舞台芸術に関する業務改善事例案集を作って、コスト・時間がどのように削減できたかを示していってはどうだろうか(山口さん)

(4)雇用形態と労働時間、キャリアプランについて
・これまで日本の企業では、正職員の雇用を前提としていたので、景気が良い時には残業をし、不景気時にはその分の時間をカットするような形でリスクヘッジをしてきており、そのことが残業の正当性にもなってきた。しかし現在のように非正規職員の雇用が増えてくると、そのような団体での残業の正当性はなくなってくる。働く側は色々な知識・背景を知った上で、怒った方が良いと思う(綿江さん)
・収入が限られる中で何を優先すべきか。自団体では人を雇うとき、できるだけ長く勤めてもらうために正社員雇用を主とし、社会保険を付けることを優先してきた(糸山さん)
・スタッフがモチベーションを継続していくために、スタッフとは年1回、将来どうしたいか、どういう人生プランを持っているかといったキャリアプランについての個人面談を行っている。その中で、例えば子育てと仕事を両立したいといった希望があれば、仕事を分割しやすく、在宅でもできる経理の仕事を覚えてもらうなど、少しずつ階段を踏んでもらうような提案をしている。逆に上司である自分が描いているキャリアプランも話して、将来のビジョンを共有できるようにしている(糸山さん)

(5)トップ層の意識改革と男女格差の是正
・劇場に社会包摂の役割が求められるようになってきている。お子さんを持っている人、障害を持っている人の方が、ダイバーシティについてのリテラシーがあることが多く、働く人のダイバーシティも重要になってくる(綿江さん)
・今回の調査では、女性と男性の配偶者率差の深刻さが明確になった。また全国公立文化施設協会が実施した「劇場、音楽堂等の活動状況に関する調査研究」からは、各組織における事業担当の平均人数は女性の方がやや多いのに対し、館長や芸術面の責任者は圧倒的に男性が多いということが明らかになっている。舞台芸術人材の労働環境問題が切実な問題だということを訴えていくためにも、もっと怒って良いと思う(大澤さん)
・人材育成では、現場の人たちをいかに教育するかという話になりがちだが、トップ層の意識が変わるところからスタートするべき。しかしトップ層では人の流動化が起こらず、トップにいる人がなかなか変わらない(観客より)
・トップ層の女性の数を大きく増やした方が良い。女性の場合、家族や近所付き合いなどの関係の中で、仕事をしていることを主張しづらく、理解してもらえないことがある。そのような中で働き方を改善するためには、子育ての大変さや、残業をどう減らすかといったことを普通に考えられる人がトップにいて、上層部を教育していく必要がある(糸山さん)

(6)その他
・美術はオリ・パラ関係予算が増えているが、そのほとんどが公的資金。ロンドンがそうであったように、2020年以降は苦しくなるだろう。どうブラッシュアップして所得をキープしていくかを考えなくてはならない(山口さん)
・フレームより先に、個人個人の意識を変えていくことが重要。制度が変わって、人の意識が変わるという順番では時間がかかりすぎる。現場の人の意識が変わり、それに合わせて制度や仕組みをそれぞれが整えていきます、という流れを起こすべき(植松)
・明らかに違法な働き方も、それがおかしいということが訴えられていない部分がある。これまで個人で抱えて終わってしまっていたもの、個人の怒りでしかなかったものをつなげ、客観視できるロジックに変えていくことが必要。Explatの役割は、そのための「継続したアクション」を起こすこと(植松)

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次は仙台です!すべての会場でのシンポジウムが終わった後、今回の労働環境実態調査の分析結果を公開します。

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