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人材育成と労働環境を考えるシンポジウム<京都での議論>(2016年11月29日) - セミナー・イベント

文化庁委託事業「平成28年度次代の文化を創造する新進芸術家育成事業」

舞台芸術のアートマネジメント専門人材の人材育成と労働環境を考えるシンポジウム ~統計・調査から分かる労働環境とこれから必要な人材育成~<京都での議論>



京都会場での議論の速報をお届けします!

11月28日(月)、京都・アトリエ劇研にて、「舞台芸術のアートマネジメント専門人材の人材育成と労働環境を考えるシンポジウム ~統計・調査から分かる労働環境とこれから必要な人材育成~」を開催いたしました。
これから2017年1月まで全国各地でシンポジウムを開催し、さらに議論を積み上げてまいります。 今後のスケジュール(札幌/福岡/名古屋/東京/仙台)詳細は、こちらをご覧ください!
以下は、京都会場でのシンポジウムの話題から一部抜粋したものをお届けします。

ファシリテーター:植松侑子(特定非営利活動法人Explat理事長)
パネリスト:
あごうさとし(劇作家・演出家/アトリエ劇研ディレクター)
蔭山陽太(ロームシアター京都支配人兼エグゼクティブ・ディレクター)
五島朋子(鳥取大学地域学部附属芸術文化センター 教授)
綿江彰禅(一般社団法人 芸術と創造 代表理事)

主催:文化庁、特定非営利活動法人Explat
共催:アトリエ劇研
制作:特定非営利活動法人Explat

議論のまとめ

京都会場では、大きく以下の4つの議論がありました。

(1)若手のマネジメント人材が地方も含めて業界全体を流動しながら、キャリアパスを描けるか。
 ≒キャリアパスの見通しの悪さをどう改善できるか


・過去に実施した「2011年度 全国公立文化施設職員キャリアパス実態調査集計結果」と今回の結果で同じ傾向が出た部分も多い。例えば、「仕事に情熱があるが、先の展望が見えない」ということ。また2011年の調査では技術職はキャリアパスがある傾向が浮かび上がったが、制作者のキャリアパスは見えにくいということが分かった。<五島さん>
・大都市と地方のキャリアについて。専門的な人材が、地方にはいない。大都市は専門性に合わせた仕事場所に人が集まるが、地方の場合、文化施設の役割が総合的なものになる。実は地方の文化施設には地域を変えるようなポテンシャルがあるのに、そこに専門的人材がいない。<五島さん>
・文化施設の中に専門家が必要だという意識を自治体が持つためには、専門家がそこに行って成果を出す事例を作っていく必要がある。専門人材を入れると実際に何ができるかを、示す根拠作りになる。<五島さん>
・地域で文化芸術を考えようとすると、地域の政策に関わることになる。それは間接的に国策とも関わってくることになる。<蔭山さん>
・(指定管理者制度が有期雇用の原因かという質問に対して)自分の関わった、これまでの公立劇場での雇用状況について考えても全国の指定管理者制度は一律ではない。<蔭山さん>
・東京等から地方に行くことについて。職場を動くことを前提に、働いたことがキャリアパスになる劇場は、全国で20から30館くらい。もし、戻ってくると意識しなければ、その地域を変えていくパイオニアになることもできる。<蔭山さん>
・若手の人材は、地方に行った後で戻ってこれるのかと考える。ライフイベント(結婚・出産)とも大きく関わる。そうなると仕事ではない部分も包括的に考える必要が。<植松>

(2)長時間労働をどうやったら減らせるか
 ≒創造現場との関係性


・小さなスペースを維持するのにも結構な苦労、労力がかかる。長時間労働をどう減らすか。業務(サービス・事業)を減らすか、人を増やすかしかない。現場のスペックでお金を生み出すのは考えづらいし、着手できる人が居ない。新規のビジネスモデルを考え、組織することが必要になる。<あごうさん>
・創造現場は他のセクションもいる。そもそも稽古が労働なのか?賃金が発生する稽古場はどうやって成立させられるのか。そうして考えていく結果、「現場にはプロ意識をもって集まるが、賃金は発生しない、もしくは委託で込み込み」ということになっていく。根本的なところから考え直して環境整備しなければ、100年経っても同じところにいるのではないだろうか。<あごうさん>
・長時間労働、ブラックということをどう判定するか。経営者がそれを理解しているか。組織のトップが専門家ではなく仕事を理解していないというのが、現場の阻害要因になることも。年間で忙しさの山がある。それを理解せずに1日ごとの労働時間のみで判断し、ノー残業が押し付けられるとかえって現場が大変になる。<蔭山さん>
・作品を創っているから長時間労働になるのはしょうがないというのは理由にならない。他の職業の人も、自分が仕事で作り上げたものは「作品」だと思っている。商品であったり、企画であったり、資料であったり。組織で働いている人は、それを「限られた時間で最大限のクオリティを出す」というルールの中で働いている。前にいた会社も残業が制限されたが、限られた時間でやるのがプロだ、という会社の意識だった。<綿江さん>
・組織の中でやるときは、限られた時間でやるのがプロフェッショナルであるということを持っておかないと、若い人が成長してマネージャーになる時にそれが価値観になって、部下にまた長時間労働を強いてしまう。<綿江さん>

(3)現場で働くマネジメント専門人材の職業としての「意識」について

・そもそも「労働」と考えられている人がどのくらいいるか。「労働環境」のアンケートに答えられない人が多いのでは<観客より>
・2011年の調査で印象的だったのは、指定管理と直営で、職員の意識が違う(直営は職場環境への満足は高いが、仕事へのモチベーションが低い、指定管理はその逆)<五島さん>
・そもそも地方では、業界の意識を変えていく以前に、業界として認識されてこなかったのでは。まずは業界意識を地方の文化施設で作っていくべきではないだろうか。<五島さん>
・組織の中で働く=限られた労働時間で成果を出すこと。そこで括れない職人的働き方をしたい人は、フリーランスという選択肢。<綿江さん>

(4)現場にいかに「経営感覚」を取り込めるか

・今回の調査の結果、業務への興味関心や、社会的意義、成長実感の満足度が高い一方、業務時間や報酬、業務量の不満が高い。つまり自分で何とかできる部分はみんな何とか折り合いをつけているが、組織や経営の部分で不満が高い。組織の場合、トップ層にいかに経営のプロを入れるかが課題なのでは。<植松>
・アートマネジメントは「アート」と「マネジメント」の合体であるが、この「マネジメント」つまり経営感覚を持った人材が非常に少ない。また学ぶ機会もないのでは<観客より>

(5)その他

・(質問:創造と労働の折り合いのつけ方という問題について、ヨーロッパでは厳格に労働時間が決まっている印象。ほかに海外での取り組み事例があれば知りたい。/参加者より)
例えば米リージョナルシアターでは、非営利の地域演劇という「業界」としての存在が大きい。業界意識、専門性グループを明確化していく必要があるのでは<五島さん>

・(質問:キャリア形成について、クリエイティブ業界はどこも同じような問題を抱えていると思うが、例えばコンサルタント業界のキャリアパスと比べると、どういう違いがあると思うか?/参加者より)
キャリパスは人が作るものではなく自分で決めるもの。例えば過去の職場では、上司と自分のキャリアプランを議論する時間が必ずあった。業界でどうサバイブするかを継続的に考える習慣を持つのが当たり前の業界だった<綿江さん>

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次は札幌です!すべての会場でのシンポジウムが終わった後、今回の労働環境実態調査の分析結果を公開します。

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